なぜ家庭犬に避妊去勢手術が必要なのか。避妊去勢手術への誤解を解く。

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なぜ家庭犬に避妊去勢手術が必要なのか。避妊去勢手術への誤解を解く。

日頃から家庭犬のしつけ相談を受ける中で、私たちドッグトレーナーが必ずヒアリングする情報の一つがこの避妊去勢の有無です。

避妊去勢手術は望まない命を作らないための対策というだけではなく、家庭犬として迎え入れた、私たち人間とは種の違う愛犬に対しての最大の配慮でもあるのです。

ここではドッグトレーナーの視点から、なぜ家庭犬に避妊去勢手術が必要なのかということと合わせて、今も尚誤解されている避妊去勢手術に関する情報を解いていきたいと思います。


■なぜ避妊去勢をする必要があるの?

避妊去勢手術が必要な理由としてあげられているものに、「望まれない命をつくらないため」と言われることがありますが、一般的に室内で家庭犬を単頭で飼う飼い主さんにはまったく必要が感じられないかと思います。

他には病気の予防というところで、女の子であれば乳腺腫瘍や子宮蓄膿症、男の子であれば前立腺肥大や精巣腫瘍などの予防に繋がるということもあります。

ですがここでお伝えしたいのは避妊去勢手術をしないことで犬たちがうける多大なストレスに関してです。

多くの動物病院では病気の予防というところの説明はなされていると思うのですが、犬が抱えるストレスに関しては病院によってはしっかりと説明がなされていないのかな?と感じることがあります。

病院では勧められたけどなんだか必要性を感じずにいて、しつけ相談にきてしっかりと説明を聞き、「そういうことなら」と手術に取り組まれる方がとても多いのを感じているからです。

■しつけの観点から見る避妊去勢の必要性

犬たちが野生下で暮らしていくとき、生き抜いていくために必要な3つの本能があります。

・繁殖本能
・危機回避本能
・捕食本能

どれも野生下ではとても重要で必要な本能ですが、人間と共に家庭犬として暮らす時、どれも必要がなく、それ以上に穏やかな暮らしの妨げになってしまうものばかりです。

「繁殖したい!」という強い本能は家の中で飼われているだけでストレスとなってしまうため、破壊行動や脱走、徘徊、攻撃行動などの問題に繋がります。

危機回避本能は野生下で生きていく時に、自らの安全を守るために素早く刺激に対応して逃げるために必要なもの。

家庭犬がその危機回避本能を強くもっていると、常に必要のないアンテナを張り巡らしている状態です。

ちょっとした物音や慣れない刺激に反応しやすく敏感になっているということです。

その結果、必要のない恐怖や不安感を感じ、吠えや噛みつき、怯えなどの問題に繋がるのです。

捕食本能はどうでしょう?

獲物を追いかけて捕まえる本能。

標的を見つけてロックオンしたら、まっすぐに追いかけ、噛みつき、振り回し、引き裂くところまでいってようやく終結します。

バイク追いや車追い、動くものに対して敏感に反応したり、子どもなど声の高い人への反応性も高くなり穏やかなお散歩が難しいでしょう。

家の中であっても飼い主の足に噛みついていくという子もいます。

どうでしょう?

野生下では必要な本能が、家庭の中で私たち人間と暮らすことで、彼らにとってストレスや問題行動の原因となってしまうのです。

種の違う犬を迎えるのは私たち飼い主の都合です。

本来犬たちは私たち人間とは全く違う生活を必要としているのです。

そんな犬たちを家庭に迎え一緒に過ごしたいと思うとき、できる限り犬たちにとって穏やかに生きやすいよう、最大限ストレスがかからないよう配慮してあげることは飼い主の責任と言えるのではないでしょうか?

■避妊去勢の適正な時期、何を重視しますか?

現代では多くの動物病院で避妊去勢手術を勧めていますが、その時期に関してはそれぞれの病院で異なっています。

しつけのサービスを行っている動物病院の多くは、発達や成長に問題が無ければ5ヶ月~6ヶ月の時期に手術を施すとこを勧めています。

ですが、成犬らしさを損なわないようにという考え方を持つ獣医さんの中には、生後7ヶ月まではしないとか、1歳すぎるまでは勧めないという獣医さんもいるようです。

ここ青森県でも地域や病院によってその時期に関しては様々です。

犬の抱えるストレスを軽減し、問題行動の予防やスムーズなしつけトレーニングの学習を考えても、私の考えは生後5~6ヶ月という早期に取り組んであげることが最適と考えています。

「幼さが残るから」という意見はありますが、外見的な要素よりも、本来であれば生活スタイルが全く違う人間と一緒に暮らす犬たちにとって、様々なストレスの原因となるものを取り除いてあげることの方が、本当の意味でお互いの利益になるのではないでしょうか。

そして避妊去勢の適正時期を逃した飼い主さんからしつけの相談を受けることも実に多いのですが、それであっても早期に取り組んであげることをオススメしています。

「適正時期を逃すとやっても意味がない!」という意見も耳にしますが、女の子の場合に避妊手術をせずに繁殖期に入ると、テストステロンという活動的で攻撃的になる要素を持つホルモンが多くなり、繁殖期が終わってからもしばらくそのホルモンが多い状態が続くのでその時期が過ぎてからの方が良い効果が期待できるという話以外には、私自身しっかりと確証を持てる情報が今は無いのが現状です。

ですが避妊去勢手術をしないまま成犬になったとしても、その後のその子が抱える必要のないストレスを取り除いてあげることができるので、しつけトレーニングに取り組む際にも取り組むことは必須なのです。

■避妊去勢をすると性格が穏やかになる?

「避妊去勢手術をすると性格が穏やかになるんですか?」
「避妊去勢手術すると問題行動が治りますか?」

なんとなくこんな話をどこかで聞いている飼い主さんが多いようで、とても誤解を生んでいるなぁと感じているのですが、避妊去勢手術で性格が変わることはありません。

さらにいうと、それまで犬が経験的にしてきた学習も変わることはありません。

避妊去勢で得られるしつけに関するメリットは先に述べている本能からくる犬たちのストレスを取り除いてあげることができるということです。

「犬の感じ方が変わる」というとわかりやすいのかもしれません。

でも実はこれがすごく価値のあることなのです。

目には見えませんが、尿中のコルチゾールを計測することで、犬のストレスを計測する実験もすでに行われています。

犬たちは私たち人間との暮らしの中で、確かにストレスを受けて生活しているのです。

ストレスが体に対して及ぼす影響としては次のことがあげられます。

・消化機能の低下
・免疫低下
・血圧上昇
・血糖値上昇

当然行動にも様々な影響があります。

・破壊行動

・自傷行為(手足を舐める、かじる、尻尾追いなど)

・常同行動(動物園の動物たちのようにウロウロ)

・興奮しやすく、落ち着かない(弱い刺激にも反応しやすい)

・攻撃性の増加
・問題行動の悪化(閾値の低下による)

まずは避妊去勢手術でこれらの原因となるストレスを取り除いてあげられるということが、しつけトレーニングの視点から考えられる一番のメリットです。

さらに避妊去勢を済ませた犬は食欲が旺盛になるというとこもあり、手術で不要なストレスを取り除き不安を取り除いてあげた状態でのトレーニングは学習がスムーズになります。

なのでルールが伝えやすく、しつけもしやすくなるのです。

避妊去勢手術によって、持ってうまれた気質やそれまでしてきた良くない学習が変わることはありませんが、すでに適正の時期を過ぎてしまっていたとしても、それ以上のストレスを取り除いてあげることと、正しいルールを伝えやすくするために、取り組んであげることが重要なのです。

ということで、犬の穏やかな暮らしと良い関係作り、しつけのしやすさを考える私としては、避妊去勢手術は全面的にオススメします。

何よりも本来求める環境や状況で暮らすことができず、私たち人間に合わせて暮らさざるを得ない犬のためです。

ですがごくまれにですが、麻酔のリスクというのもあります。

事前の血液検査でだいぶそのリスクは少なくなっているようですが、しっかりと信頼できる獣医さんと相談しながら進めていくことをオススメします。

犬たちの健やかで穏やかな暮らしのために、避妊去勢の情報がしっかりと伝わることを願っています。

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