大型犬には体罰を使うしつけをしてもいい?
チョークチェーンと呼ばれる、締まり続けるタイプのリードを使用し、強く引いてショックを与えたり、叩いたり蹴ったり足を踏んだりなど、犬の好ましくな行動に対して罰を与える(正の罰)しつけ法があります。
事故などの心配で小型犬には使用しなかったり、臆病なタイプの犬に対して行うと攻撃性を引き出してしまうことから、全ての犬に対して行うという訓練士は減ってきているようですが、それでも「力の強い大型犬には必要」という考えがまだ根強くあることも感じています。
結論から言うと大型犬であっても、ポジティブな性格の犬であっても、体罰を与えるしつけ方法はおすすめしません。
強い力を持つ大型犬にこそ、力を教えることなく賢く育てることが必要なのです。
■力を教えることで波及する問題
力の強い大型犬だから、力の弱い小型犬だからとしつけ方法が変わることはありません。
力の強い大型犬にこそ、力を教えてはならないのです。
家庭の中でよくありがちなのが、力が強く体罰を与えるお父さんのまえではお利口で、力の弱いお母さんに対してはイタズラや飛びつきが耐えないという問題です。
お父さんの前ではお利口なので、お父さんは問題視しておらず、自分のしつけ方法も正しいと思い込んでいます。
ですが、力を教えたことで、自分よりも力の弱い人に対してはイタズラしても問題ないと学習し、よりお母さんへの問題行動が悪化してしまっている状況。
お父さんは自分は困っていないので、問題を感じていませんが、お母さんが困って相談してくるというパターンがほとんどです。
お母さんもお父さんと同じようにできれば、問題は解決出来るのかもしれませんが、それができているなら相談にくることはないのです。
これと同じことが、体罰を使う訓練士と飼い主の間で起こっています。
訓練士の前では困った行動はしない。
でも飼い主といるときには同じようにならない。
むしろ問題行動が激しくでる。
力尽くで体罰を与えしつけることは、力を教えること。
それと同時に、自分よりも弱い立場の対象に対して、力尽くで対応しようとすることにも繋がってしまう。
そのことを、私たちはもっと慎重に考えて犬たちと接して行かなければなりません。
■動物病院が嫌いになってしまった犬たち
日本でも全国各地で、動物病院でのしつけ教室が行われるようになってきています。
仔犬の社会化を目的とした「パピーパーティー」という仔犬対象のしつけ教室は、動物病院嫌いになる犬を減らすことにとても良い効果をあげています。
ここ青森県でも、犬のしつけに対しての意識の高い動物病院では定期・不定期に、社会化のための「パピーパーティー」を独自に開催しているところが増えてきたように感じます。
実際に病院嫌いな子を減らし、診察がスムーズにすすむようになったり、犬が喜んで通院することから飼い主の負担をなくしたりというよても良い効果が得られています。
そんな素晴らしい取り組みとは裏腹に、提供するしつけ法によって、その動物病院自体が嫌いになって通院しづらくなってしまったという話も聞くようになりました。
まさしく体罰の弊害です。
痛みや苦痛と同時に犬たちが感じる恐怖感情は、別の何とリンクするかわからない、ロシアンルーレットのようなものです。
動物病院のしつけ教室で指導され与えられた体罰は、困った行動をやめさせる効果だけに留まらず、その場所自体が嫌いになってしまうという副作用を生んだのです。
しつけ教室を行ったその場では、罰の恐怖に怯え、飼い主が感じる困った行動は改善されるかもしれません。
ですがそれと引き替えに、動物病院の手前で後引きして入りたくないと抵抗したり、暴れたりというさらなる問題を抱えることになります。
体罰のリスクはここに書いたことにとどまらすたくさんあります。
それでも体罰を使ったしつけ方法を選択しますか?
道具や管理の仕方で問題となる行動を出させずに、好ましい行動を教えていく学習理論に基づいたしつけ方法があります。
必要な知識や技術を身につけ、力ではなく、賢く愛犬を育てていける飼い主が増えることを祈っています。