飼い主への吠えをなくする消去の手続き
愛犬のしつけ相談の中でよくある要求吠えの問題。
犬たちが吠えるにはいくつかの理由があるのですが、その吠えは警戒吠えと要求吠えの2つにわけることができます。
警戒吠えとは不安や恐怖の感情を伴い、嫌な物を遠ざけようとすることが目的になっています。
対して要求吠えとは不安や恐怖などの感情は伴わず、自分の訴えを主張するものです。
飼い主に対しての吠えの多くがこの要求吠えにあたります。
今回はこの要求の吠えを改善していくための消去の手続きについて説明していきたいと思います。
■吠えることは効果的であるという学習
要求吠えがある犬たちは、吠えることが自分の望んでいることを得るために効果的であると学習しています。
たとえば、、、
①飼い主が食事をしているときに犬が近くでたまたま吠えた。
すると飼い主は「これがほしいの?」と言っておかずの端っこを与えた。
②朝になり犬が散歩の時間を期待して、たまたま吠えてみたら飼い主が起きてきて散歩に連れ出してくれた。
③サークルの中で留守番中に飼い主が帰宅して、興奮した犬がたまたま吠えたら飼い主がサークルから出してくれた。
こんな最初はたまたまだった行動が何度か続くと、犬たちは吠えることが望んでいることを得るために効果的だと学習することになります。
自発行動の直後に良い結果がもたらされると、その行動は強化(頻繁になる、強くなる)されていきます。
ここでは犬たちの「吠える」という行動が強化されているのです。
①おかずなし→吠える→おかずあり
②散歩なし→吠える→散歩あり
③自由なスペースなし→吠える→自由なスペースあり
このように行動の前後で状況が変化し、犬にとって好ましいことが起こるとその行動は効果的だと学習し、その行動の頻度が増えていきます。
では一度強化されたこの「吠える」行動はどのように改善していくことができるのでしょうか。
■機能を変える消去の手続き
行動の前後で状況に変化が起こり、吠えることが効果的だと学習しえいる状態の犬たちを改善に導くためには、こちらの対応をこれまでとは手続きに変える必要があります。
そこで必要なのが「消去」と呼ばれる手続きです。
消去とは行動の前後で状況がまったく変化しないことをいいます。
さきほどまでの例で消去の手続きを行うと次の通りになります。
①おかずなし→吠える→おかずなし
②散歩なし→吠える→散歩なし
③自由なスペースなし→吠える→自由なスペースなし
これまでは効果的だと思っていたことが、機能を果たさなくなるとその行動は効果がないと学習して、弱まっていったりなくなったりしていきます。
これを消去といいます。
しかし一度効果があると学習している行動が消去の手続きを取り始めると、一時的に強く出るようになっています。
これで反応してくれるはず!
これが効果的だったよね!!
というように、最後の悪あがきのように一度行動が強まるのです。
これは私たち人間でもおこることです。
たとえば自販機でジュースを買おうとしてお金をいれてボタンを押したけれども出てこない。
そんな時にいつもよりも強くボタンを押したり、連打してみたり、たたいたり蹴ったりする人もいるかもしれません。
使い慣れていたペンが出なくなった時、いつもよりも紙に強く押し当てたり、ゴリゴリとペン先をこするかもしれません。
これは消去の手続きが起こり、一時的に行動が強くなっていることの現れです。
これを「消去バースト」といいます。
この消去バーストを経て、それでもなおその行動が効果的でないという消去の手続きが続けば、一度強化された行動がなくなっていくのです。
これは犬の吠えにも同じく言えることで、一度強化された吠えは無視というかたちで消去の手続きをはじめると一時的に激しくなります。
そこで焦ることはありません。
効果的に改善が進むためのプロセスなので、根気よく消去の手続きをとり続けることが必要です。
消去バーストを超えて行動が完全になくなっても、一定期間消去の手続きが行われなければ自然回復といってその行動が再び出てくることがありま。
過去に効果が合った行動をまた試してみよう!という感じです。
ですがそれも超えて消去の手続きを続けていくと次第にその吠えはなくなっていきます。
愛犬の要求吠えを改善していくためには徹底した消去の手続きが必要なのです。
しかし、消去の手続きだけでは愛犬にどうしていてほしいかを伝えることができません。
吠える以外のフセやハウスやマットなど、吠えに変わる別の行動を教えてあげることがお互いのストレスの軽減につながります。
良い行動を強化し、望ましくない行動を消去していく。
この両輪で愛犬の要求行動を改善していきましょう。
実際にトレーニングに取り組みたい方はお気軽にご相談ください。