オオカミの群れから読み解く犬との理想の関係性
前回の記事では現代の家庭犬と飼い主に求められている関係は主従関係ではなく、パートナーシップ、信頼関係であるとお伝えしました。
そして犬たちは上下関係で関わりを選んでいるのではなく、損得で選んでいるということもお伝えしました。
実はオオカミの群れでの順位付けはこの損得で決められることが分かっています。
オオカミの群れの中でどのように個体の位が決まるのかは、実は力のあるものが虚勢を張り強制で怒るのではなく、この損得だったのです。。。
Contents
■オオカミの群れに位ができるまで
オオカミの位は大きく分けて次の4つに分けられます。
・アルファ
・ベータ
・シグマ
・オメガ
アルファはその群れのトップであり、1つの群れに対して1頭だけがその位にいます。
アルファの次の位はベータです。
ベータは1頭のアルファに対して2~3頭でついていく、アルファの次に続く位のオオカミたちです。
その次がシグマ。
シグマはベータに続く位でその頭数はさらに増えていきます。
最後はオメガと呼ばれるグループで、後に今の犬たちの祖先となるグループです。
ある日1頭のオオカミが獲物の鳴き声を聞きつけ、見事獲物を仕留めて食事にありつきます。
最初に獲物を見つけそれを捕らえることができるオオカミ。
それがアルファになります。
その獲物の匂いをかぎつけベータたちがやってきて、アルファのおこぼれをもらうことができます。
その後にシグマがやってきて残り少ないおこぼれを食べるのですが、オメガたちがたどり着く頃にはもう食べられるところはなくなってしまっているので、オメガのグループはいつもお腹をすかせています。
このように「アルファについていくと食事にあるつけることができる!」という損得からオオカミの群れの位は決まっていくのです。
そしていつもお腹をすかせているオメガオオカミたちは、人里にいたほうが食事にありつけることを学習し、人と生活を共にするようになったのです。
アルファシンドロームといわれる言葉があるくらい、この順位付けのようなことは犬と飼い主の主従関係に当てはめて考えられがちなのですが、そもそもオオカミの群れですら強制で成り立っているのではなく損得で成り立ってリーダーが決められていたということを知ってほしいのです。
ここで優位行動、劣位行動という表現をしましょう。
優位行動が多く見られる個体、劣位行動が多く見られる個体はいますがそれは順位を表すものではないということです。
位が上の者が、位の下のものに道を譲ったりすることもあります。
人間の職場で、上司が部下に道を譲ったりするのと同じ事なのです。
そう考えると私たちが家庭犬に対して、熱心に順位付けを気にしているのが滑稽に感じてきませんか?
「順位付け」という迷信を勝手に信じて意識しているのは、私たち人間だけなのですから。
大切なことなので何度もお伝えしたいと思います。
犬と飼い主に必要なのは「主従関係」ではなく、「信頼関係」です。
そして様々な研究から、このオオカミの群れの関わりに、1つのとてもおもしろい特徴があることが分かっています。
■物事の始まりは誰が切る
オオカミの群れの中で遊びはとても重要なコミュニケーションの要素を持っているようです。
一方のオオカミが遊びに誘い、もう一方のオオカミがその遊びに応える。
この普通の事が、それぞれの位によって受け入れられたり受け入れられなかったりするようです。
アルファ
↓
ベータ
↓
シグマ
↓
オメガ
上の位の者から誘われた遊びは下の位の者は必ず応じるのです。
ですが、自分の位よりも下の位の者に誘われた遊びは絶対に乗ることがありません。
なのでベータはアルファからの遊びの誘いには応じますが、シグマやオメガからの遊びの誘いには決して乗らないのだそうです。
これがどんなことを意味するか分かりますか?
私たち犬と暮らす飼い主が、家庭の中で物事のスタートを切っているということがとても重要だということです。
そして、犬たちがスタートを切るものに対して応じていると良くないということです。
先にものべたように、犬たちは損得で行動を選択する生き物です。
家庭犬として暮らす犬たちには「飼い主のいうことをきくことは得なことだ」と教えてあげたいのですから、犬たちが物事のスタートを切っている状況というのは、それが上手く伝わりづらい状況ということなのです。
このオオカミの群れから教えられることは、主従関係ではないということと、強制することなく真のリーダーシップを発揮していこうということです。
良質な情報との出会いは愛犬との暮らしも豊かにします。
ぜひ愛犬との関わりに役立ててくださいね。
コメント
こんにちは。保護犬を迎えて、関係と信頼を構築していくのに、タナカさんの記事を読ませてもらって、日々勉強になります!ありがとうございますm(_ _)m
この記事の内容からいくと、食事の順番はヒトが終わってから、犬とした方がよいのでしょうか?うちは共働きの為、ヒトの食事の用意をしている間に、散歩に連れていき、散歩から帰ると激しくごはんの要求をしてくるので、先に犬がたべ、その後人間の食事という順番になっていますが、良くないのでしょうか?
ツルミさま
コメントいただきありがとうございます^_^
愛犬との暮らしのために学んでくださること、とても嬉しく思います。
ご質問にありました食事の順番ですが、そのままストレートにお応えすると、順番についてはどちらが先でも構いません。
ただし、いただいたコメントにあるように、要求があってからそれがおさまらないうちに与えてしまうことには、要求行動を増やすことに繋がります。
お散歩に出たら、戻ってすぐに与えられるよう事前に食事を準備しておき、要求行動が出る前に与えることや、別のシーンで抑制の意識を育むトレーニングに取り組む必要があるかと思います。
これに限らずですが、手法に囚われず、本質的な考えを身につけるために、お近くのモチベーショナルトレーニングをレクチャーしてくれるお教室で学ばれることをお勧めいたします^_^
コメントありがとうございます。
食事の順番が大事なのではなく、与えるタイミングにわんちゃんが穏やかであることが大事です。
激しく要求してきってから与えるというのは、わんちゃんにとって「激しく要求すればごはんが出てくる」という学習につながります。
順番よりもどうやったら穏やかな食事をはじめられるかにフォーカスしてあげると良いですね!
要求してくるタイミングで「フセをしていたら得ですよ」と教えていくことはトレーニングですが、
それ以外にも工夫できることは様々にあると思います。
ぜひお近くのトレーナーさんにご相談ください♪
またはzoomでのカウンセリングは当方でも対応可能ですのでご希望ありましたらお知らせください。
はじめまして。
人から教えてもらってこちらのページにたどり着いた者です。
優位行動、劣位行動の表現について。
この言葉は、「順位を表すものではない」というのは同意です。
そして、下記のご説明ですが…。
「位が上の者が、位の下のものに道を譲ったりすることもあります」
これ、位が上の者、下の者と決まったものがあるように書かれていますが、おそらく本来の解釈は違っていて、
道を譲る行動、そのものが「劣位行動」であり、その逆が「優位行動」です。
上の位のものが…とか、下の位のものが…と書いてしまうと、
あたかもその位が存在し、固定されているように読み手には感じられてしまうかなと思いました。
日本語だけでなく、英語でも誤解を招く言葉を使っているので、紛らわしい言葉であると思いますが、まだまだリーダー論や上下関係といった誤解のある我が国では、些細な言葉にも留意したいなと思っています。
学び頑張ってください。
人間の職場で、上司が部下に道を譲ったりするのと同じ事なのです。
コメントありがとうございます。
そうですね!おっしゃる通り、上司が部下に道を譲るのと同じこと。
状況によって優位行動、劣位行動が変化することはわかっていたつもりなのですが、私の認識不足ゆえの誤解を与える文書になっていますね。
こうしてコメントでご指摘いただけてとてもありがたいです。
後ほど記事も訂正しようと思います。
よろしければぜひ今後もいろいろ教えていただきたいのですが、FBなどでつながっていただけたりしませんか?