基調講演「ペットと暮らす老後を考える~アニマルセラピーの効果~」レポ②
レポ①に引き続き、青森県動物愛護センターで開催された、レベッカジョンソン先生の講演会の内容を記録しておきます。
■ペットの飼育による身体的メリット
ペットと暮らすことで、私たち飼い主の身体にどのようなメリットがあるのかをご説明いただきました。
まずは高齢者の場合、高血圧が改善し、トリグリセリドとコレステロール値が低下するということ。
トリグリセリドとは中性脂肪の1つであり、高値になると動脈硬化・膵臓炎につながるものです。
肝臓にトリアシルグリセロールが過剰に沈着すると、脂肪肝になります。
また、ペットと暮らしている人は、心筋梗塞から1年後の生存率が、ペットと暮らしていない人よりも上昇することがわかっています。
■犬の散歩が与える影響
オーストラリアでの研究では、犬を飼っている人は、日常的に犬の散歩をすることから、犬を飼っていない人よりも毎週18分多く歩き、推奨されている毎週150分を達成する割合が多いことがわかっています。
アメリカでは、犬を飼っている成人は10分以上のウォーキングを合計30分以上行っているそうです。
それだけ犬の散歩をさせたいということが動機付けとなり、飼い主の運動量を上げ、健康な暮らしに作用しているのです。
また、犬の散歩が心臓血管に及ぼす影響として、犬を連れずに散歩するよりも身体的に良い影響がでることも、科学的実験に基づいて説明されていました。
それだけでなく、「地域のソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」として、オーストラリアでの調査結果が報告されていました。
オーストラリアでの調査によると、犬の散歩が定期的に行われている地域は、好感度が高く、より資産価値が高い印象を与えるのだそうです。
これは地域の安全を守るための治安維持や地域の好感度に繋がる、地域にとっても非常にメリットがあることなのです。
素晴らしですね~
マナーさえしっかりとできていれば、犬の散歩をするだけで地域貢献になっているのですから。
■アタッチメントと心理的な効用
アタッチメントとは近年子育ての中でも重要とされ多くの人が耳すするようになたであろう「愛着」のことです。
私たち人間にも動物たちにも、生物学的に遺伝子に組み込まれた「愛着」があり、それはとても重要なものです。
「アタッチメント(愛着)」の働き
近接性の維持・・・得に必要な時に、愛着対象のそばにいたいという欲求
安全な避難所・・・愛着対象は、苦痛を和らげ安らぎと支援を提供してくれる
安全基地・・・愛着対象は、冒険、リスクのある行動、自己開発を支えてくれる
分離苦悩・・・愛着対象がそばにいないときに苦痛を感じる
これらはどちらか一方ではなく、人と動物相互に働くものなのです。
「あなたが離れていて、ペットに会いたいわと思っているとき、ペットたちも同じように、あなたに会いたいと思っています。」
これは信頼関係のある、人と人との親密な繋がりと同じと言えるものなのです。
さらに高齢者がペットを飼うと、抑うつ状態に陥りにくくなることもわかっています。
人は高齢になると、友人や家族という大切な存在を亡くしたり、それまでできていたことがどんどんできなくなってしまったりと、生きる意味や生きる希望を感じにくくなっていきます。
生きる理由が必要になります。
そのとき、ペットたちは高齢者の生きる力となり得るのです。
ペットは社会的繋がりと、お互いの交流を提供することで、高齢者の暮らしを豊かにするサポートとなるのです。
ペットの飼い主は、そうでない人よりも意欲が高く、肉体的機能の衰えを防いでいます。
また、ペットによる支援は、人による支援よりも孤独をやわらげる効果が高いこともわかっています。
ペットは地位や肩書きや身なりなど、なにも値踏みせず、無条件の愛情を示してくれることを私たちは知っているからです。