基調講演「ペットと暮らす老後を考える~アニマルセラピーの効果~」レポ最終章
だいぶ間が空いてしまいましたが、レベッカジョンソン先生の講演会のレポの最終章です。
■タイガープレイスの取り組みとは
タイガープレイスはアメリカミーズリー州にあるミーズリー大学にある老人福祉施設です。
ここでは心身共に健康な暮らしとQOLの向上のために、高齢者が動物と暮らすことを推奨しており、入居者だけでなく一緒に暮らす犬や猫も高度な医療を受けることができます。
入居者は様々に事情や健康状態で一緒に暮らす犬や猫のお世話がままならない状態になっても、決して高くはない金額で、犬猫のお世話やお世話に必要なものの買い出しなど、シッターのようなサポートを受けることもできます。
猫砂を買って運ぶということも、高齢者にとっては重労働となりますが、このような少しのサポートがあるだけで、動物との暮らしを不自由なく楽しむことができます。
また、タイガープレイスでは学生の実習も行っており、より実践的な形での研修を受けることが可能なのです。
また、高齢な飼い主が犬猫を飼育することでの一番の問題となりがちな、飼い主が先立ってしまった場合の犬猫たちの行く先ですが、こちらもまずはタイガープレイス内で譲渡をすすめ、最後まで動物たちの命も保証してくれます。
また、入居者の犬猫が亡くなってしまった場合、入居者が希望すれば新たな動物を地域の愛護団体から紹介してマッチング譲渡までのサポートもしてくれるのです。
高齢者が動物と暮らすことで起こる問題を多方面からカバーできる、まさに夢のような施設ですね~。
■日本の動物愛護団体はどうすればいい?
夢のようなタイガープレイスの紹介や、動物と暮らすことでの心身の健康、QOLの向上などのメリットをたくさんお伝えいただきながらも、ここ日本での動物たちを取り巻く現状とのギャップを感じずにはいられません。
質疑応答の時間となり、会場からは皆さんが気になっているであろう質問があがりました。
動物愛護団体の方からでした。
「自分が高齢になってしまったから飼いきれない」という理由での引き取り希望がとても多い。
そのような方が多い現状で、譲渡を希望する方への制約としても、「60歳以上は不可」や「60歳以上は後継人が必要」という縛りがある現状。
やはり高齢者が動物を飼うことについて積極的に進められない現状がありますが、なにか良い方法はありますでしょうか?
レベッカ先生の答えは「その制約は今すぐに変えるべき」というものでした。
高齢者にかかっている医療費を見ても、動物と暮らすことでの経済的なメリットも大きい。
高齢者にこそ、積極的に動物と暮らしてほしい。
そこにお世話のしづらさなどがあるのであれば、それこそビジネスチャンスなのでは?とのお話でした。
受容があるからそれに見合ったサービスを提供する。
そのことで社会が上手く回り、高齢者が動物との暮らしで満たされながら豊かな老後を送れるのであればそれはとても理想的なこと。
高齢になっても大好きな動物と暮らすことを諦めないでほしい。
それは以前から私も考えていたことです。
そのためのサポートとしてドッグシッターのサービスも行っています。
ですが実際に犬を飼い、犬への教育のためにお金を支払える意識の高い方たちはまだまだ少数と感じています。
しつけやお世話などの必要なサポートにしっかりとお金をかけられる、飼い主さんが増えていくこと。
人と同じくいつ何が起こるかわからない命あるものですから、動物を飼うということには、経済的に安定していなければならないという責任もあります。
そして適正な価格でシッター等のサービスが受けられるよう、地域に動物を扱えるプロシッター、ドッグトレーナーが増えていくことも必要です。
夢のような社会の実現には時間がかかると思いますが、それぞれの立場でできることを持ち寄り、目の前のことに取り組んでいくことこそが必要なのではないかと思います。